JR北海道は2021年3月のダイヤ改正で「快速なよろ」などに新型電気式気動車H100形を導入することによって、札幌~旭川~名寄間を最大31分速達化を行うと発表しました。
通常、鉄道における時間短縮は数分程度となっていますが、今回最大31分の速達化を行うことに対して、鉄道ファンからは称賛の声が上がっています。
快速「なよろ」など2021年3月ダイヤ改正で高速化実施 宗谷線に新型車両導入
JR北海道は宗谷本線を走る快速「なよろ」などの快速列車・普通列車に新型車両H100形を導入します。これにより、2021年3月のダイヤ改正で高速化・乗り継ぎ改善が行われます。
従来の国鉄時代から継承している気動車キハ40形は2021年3月のダイヤ改正で活躍の場が減少することになりました。
ダイヤ改正後は、旭川~名寄間で運転されている37本中34本の列車が新型車両H100形での運転となります。
快速なよろの時刻表 2021年3月ダイヤ改正後
今回のダイヤ改正で札幌~旭川~名寄間の所要時間が、札幌→名寄間で最大30分短くなります。
理由は車両の性能が向上し、従来より所要時間を短くできるほか、列車の行き違いにかかる時間も短くすることができます。この辺りはJR北海道も努力されたのではないでしょうか?
快速なよろの最速列車はライラック11号と快速なよろ1号を乗り継いだ場合で、札幌~名寄間の所要時間は2時間39分で、約210kmの区間を走破することになります。
参考までに東海道本線で例えると、東京から静岡県の金谷間に相当する距離で、普通列車だと4時間、東海道新幹線を使っても2時間10分程度かかる区間になっています。
利用者の少ない途中駅5駅を廃止
宗谷本線では快速なよろの高速化が実施されますが、普通列車しか止まらない駅の中で利用客の少ない途中駅5駅を廃止にします。
ほとんどの駅が平均利用者数が1日2人以下で、駅周辺に人がいないため、鉄道の高速・大量輸送をするという役目を達成できない駅が今回廃止対象となっています。
これにより、普通列車の停車駅が削減されるため、それだけ所要時間を短縮することができます。
元々、利用客がいない駅なので、廃止による利用客減少はほとんどなく、所要時間を短縮できることから、JR北海道にとっては維持メンテナンス費の削減、乗客は所要時間が短縮されるというメリットがあります。
なぜ宗谷本線快速・普通列車の高速化は簡単だったのか
なぜ宗谷本線の快速なよろと普通列車の高速化は簡単だったのでしょうか?
通常高速化を実施する際には線路の改良工事などが必要であり、簡単にできるものではありません。
今回高速化が行われた宗谷本線の旭川~名寄間ですが、元々宗谷本線で運転されている特急「サロベツ」「宗谷」が走っていたから、比較的簡単に実施することができました。
宗谷本線は第三セクターの北海道高速鉄道開発株式会社によって高速化がされ、2000年に特急宗谷がデビューし、この頃から最高速度120km/hでの運転がされていました。
元々特急列車で120km/hで走れる区間を最高速度100km/hのH100形で走行するわけですから、線路の改良工事などもする必要がありません。
確かに新型車両の導入コストはありますが、今まで引退すべき車両を使い続けてきた面があったため、新型車両の導入は古い車両の置き換えのためで、高速化はどちらかと言えば、ついでに行われたものと考えられます。
また、今回導入される新型車両H100形電気式気動車は、すでに導入されているJR東日本のGV-E400形の設計を流用しており、開発費自体は1から設計するより、一部仕様を変更して製造した方が導入コストは安く済みます。開発期間も通常数年はかかるので、その期間も短縮したことになります。
こういった事情から簡単に高速化・新型車両導入をすることができたというわけです。
宗谷本線の今後 旭川~比布間の普通列車も削減へ
これから宗谷本線はどうなっていくのでしょうか?
今回の高速化・所要時間の短縮は並行する札幌~名寄間の高速バスに対する対抗措置という面もあるのではないかと考えられます。
宗谷本線を含め今後H100形電気式気動車の導入によって、高速化がされ所要時間が大幅に短縮となるでしょう。函館本線などでもH100形導入による所要時間の短縮が実現される予定となっています。
従来型の国鉄時代からのキハ40形が引退の方向へ向かっていくことは、鉄道ファンにとっては悲しい出来事かもしれませんが、沿線住民の方にとっては、新しい車両によって車内が快適になるので喜ばしいことと思います。
確実に今後H100形電気式気動車は北海道各地で活躍し、所要時間の短縮が同時に行われるでしょう。
特急サロベツ3号・4号は閑散期曜日運休へ 2021年3月ダイヤ改正から
宗谷本線では明るい話題だけではなく暗い話題もあります。
今後少子高齢化で利用客が減少し、北海道の鉄道網が衰退していき、維持できない・必要とされていない路線は廃線になってしまうかもしれません。
2021年3月のダイヤ改正で、利用客の少ない路線・列車については容赦なく減便がされ、代行バス・快速列車までが運転取りやめの対象となっています。
宗谷本線も例外ではなく、旭川~比布間の普通列車について2021年3月のダイヤ改正で1往復削減されることが決定しています。また、特急列車についても特急サロベツ3号(旭川20時6分発)、特急サロベツ4号(稚内発13時01分発)は閑散期の火曜日・水曜日・木曜日は運休となります。
今後、利用客が減少すれば、更なる減便や区間短縮が今後行われる可能性があります。
既に宗谷本線では名寄・音威子府~稚内の区間では特急列車を使わなければ移動ができないのが実情です。こういった区間が今後拡大される可能性は、数年~数十年単位で見れば、現実になる可能性は十分にあると思います。
新型コロナウイルスの影響で、JR北海道では最も利用客の多い新千歳空港~札幌間を含む札幌圏の鉄道についても赤字となっており、経営が苦しい状況です。
例えば本来5年後に実施される計画のものを収益・利用客の急激な減少によって、前倒しにされる例も出てくるでしょう。JR北海道の旅行会社の個人向け営業所廃止も1年前倒しされ実施されています。
おそらく鉄道ファンの力で北海道の鉄道網の衰退は止められないと思いますが、せめて今乗っておきたい列車でなくなる可能性が少しでもあるのなら、乗っておいて損はないかと思います。