日本最大の私鉄である近鉄。近鉄と言えば全席指定で必ず座れることが売りの「近鉄特急」があります。今回はなぜ近鉄特急には「自由席」がなく「全席指定」しかないのかということについて解説していきたいと思います。
意外と知られていない近鉄特急は全席指定で自由席がない理由
近鉄は日本最大で私鉄で関西を拠点としている鉄道会社です。路線の総延長はJR以外の鉄道会社としては異例の501.1kmを有しています。近鉄特急の主力路線といえば大阪難波~近鉄名古屋を結ぶ名阪特急をはじめ、8つの系統の近鉄特急が運行しています。
※近鉄特急の8つの系統とは:名阪(めいはん)、阪伊(はんい)、名伊(めいい)、京伊(けいい)、京橿(けいかし)、京奈(けいな)、阪奈(はんな)、吉野(よしの)
近鉄特急にはJRの特急にある「自由席」がなく全ての列車で「全席指定」となっています。なぜ近鉄特急には自由席がないのでしょうか?
近鉄特急に自由席がないのは歴史的な経緯があった
近鉄特急の運行が始まったのは1947年10月8日、大阪上本町~近鉄名古屋間で運転を開始しました。当時の所要時間は4時間3分で結んでいました。当時は終戦間もないころで設備が不十分で、車両も足りていない状況下での特急列車の運行でした。当時の日本はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)占領下にあり、先述の状況かにもかかわらず特急列車を運行させたことに対して「在来列車の整備を先行させよ」と強いクレームがついたそうで、近鉄はこの列車の特急料金を名目上「座席指定料金」とせざるを得ませんでした。
1947年~1949年までは「ホームライナー」のように座席定員制となっていましたが、1949年6月25日からは座席指定制となり、この流れは現在まで受け継がれています。
特急料金を名目上「座席指定料金」としたことが近鉄特急に「自由席」がない理由です。また、有料特急としては戦後日本初の有料特急として誕生します。
一時期は東海道新幹線の開業で名阪ノンストップの廃止も検討され、2両編成で運転されていたこともありましたが、車内サービスのアップと国鉄との運賃格差が広がったことから徐々に乗客が増え、現在の名阪特急には80000系列の「ひのとり」が新しく投入されさらなるサービスアップを図っています。
2020年度末で消滅する伝統の「近鉄カラー」
一般の方であまり知っている方は少ないと思いますが、長年近鉄特急といえば、オレンジと紺の伝統の「近鉄カラー」は2020年度末まで消滅することになりました。これは近鉄カラーが古い12200系という車両のみに塗装されています。実はビスタカーなど2020年度末以降も使用する近鉄特急の車両は塗装が変更されています。
従来の近鉄カラーとは異なり車体の大部分は白色、車体上部はオレンジ、運転席の全面部分のみが黒という配色になっており、近鉄12200系以外の車両については全て新しい近鉄カラーに塗装が変更されています。
ということは12200系は2020年度末で特急列車から引退となりますので、今後近鉄特急を利用する時に従来の近鉄カラーの車両に巡り合うことは無くなってしまうので、近鉄沿線の一般の方でも思い入れのある方は今のうちに記録しておいた方がいいと思います。
※12200系の特急列車からの引退は今後団体列車などに転用してまだ使い続けていくという解釈をしています。団体列車として使用する場合には塗装を変更することが予想されるのでいずれにせよ、従来の「近鉄カラー」を身にまとった近鉄12200系は記録していくことが必要かと思います。