JR常磐線とメトロの直通運転を巡り、割高運賃だと裁判が提訴されていました。一体どういうことなのか、詳しく解説をします。

市民団体がJR・メトロ・国を提訴

2022年10月19日、JR東日本の常磐線各駅停車と東京メトロ千代田線の相互乗り入れで運賃が割高になるのは不当として、利用者が両社と国に払い過ぎた運賃計2万6980円の賠償を求めた訴訟がありました。原告は、「亀有・金町の鉄道問題を考える会」に所属する常磐線亀有駅と金町駅の利用者16人です。

  • 1971年: 常磐線と営団地下鉄の相互乗り入れ開始。全葛飾区議会議員が運輸大臣や鉄道関係者に要望書を提出。
  • 2001~2004年: 松永代表が亀有駅長やJR東日本社長に相次いで質問状を提出。
  • 2006年: 葛飾区議会が国土交通省に意見書を提出。
  • 2008年: 足立区議会がJR東日本に要望書を提出。
  • 2018~2019年: 中村弁護士との法律的な相談が始まり、講演会が実施。
  • 2022~2023年: 運賃に関する裁判が開始。

同団体の略歴(公式ホームページより)

両駅には常磐線各駅停車しか止まらず、北千住で千代田線に直通をし、上野方面には乗り入れません。そのため、乗り換えをせずに都心に向かう場合、北千住からはメトロの初乗り運賃が加算されます。

「二重区間」運賃問題は国鉄・営団地下鉄時代まで遡る

常磐線各駅停車と千代田線の関係はかなり複雑で、綾瀬駅~北千住駅間は千代田線であり常磐線でもある二重区間となっています。これは、1971年に常磐線と千代田線を直通させるとき、当時の営団地下鉄が建設し、国鉄と共同利用としたからです。

同区間をまたいでJRのみ利用するときはJR運賃、東京メトロ線のみ利用するときは東京メトロ運賃で計算することになっています。同区間をJR線発着で利用する場合はJRの運賃、メトロ線発着で利用する場合はメトロの運賃ということですね。なお、同区間のみを利用する場合は、JR側では旅客営業規則第16条の5により乗車券を発売しないため、メトロ側で購入する必要がありますが、運賃はメトロと比べて低廉となるJRの初乗りが適用されます。

JR線とメトロ線をまたがって利用する場合は北千住駅を境に両路線の運賃が別々に必要です。

一般利用者は気づかない? 複雑な運賃計算

例えば金町駅から上野駅に向かう場合、全区間でJRを使い、北千住駅で乗り換えをすると230円(提訴当時は220円)ですが、西日暮里駅で乗り換えると402円(同372円)かかります。

乗り換え案内を確認すると、西日暮里駅で乗り換えをする場合は、通しで402円と表示されています。しかし、実際には金町駅から北千住駅で178円、北千住駅から西日暮里駅で178円、西日暮里駅から上野駅で146円かかり、そこから相互乗継割引の100円が引かれて402円となっています(IC乗車券のみ)。

紙のきっぷの場合は通過連絡運輸という制度があり、JRの前後の区間のキロ程を合計してJR部分の運賃を算出し、それにメトロ線運賃180円を加算するという計算方法になります。いずれも対象区間に制限があるのですが、ここでは割愛します。

直通をしているので乗り換えは1回ですが、JR~メトロ~JRとなり、運賃計算上は、JR線の間にメトロ線を挟んでいるので、北千住駅と西日暮里駅でそれぞれ運賃が打ち切られています。

なぜ裁判になったのか

北千住駅 構内図

どの経路でも乗り換えが必要なのですが、原告側は「北千住駅は階段などがあり、足が不自由な人らの乗り換えは容易ではない」とした上で、「運賃格差は受忍限度をはるかに超えている」と主張。運賃が割高になるのは不当として、原告らは両社と国に払い過ぎた運賃計約2万7000円の賠償を求め提訴していました。

JR東日本によると、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)対象駅(1日当たりの利用人数3,000人以上の駅に加え、バリアフリー基本構想の生活関連施設に位置付けられた2,000人以上の駅)へ優先的に整備することを基本に、様々な条件を考慮した上で計画的にエレベーター等の整備を行っているとしています。

なお、提訴当時と運賃が異なっているのは、バリアフリー化を進めるため、転落防止のホームドアやエレベーターの設置などの費用を運賃に上乗せして鉄道の利用者に幅広く負担してもらう国の制度「鉄道駅バリアフリー料金制度」によるものです。

エレベーターは設置されているものの、原告代表は「北千住での乗り換えは地下2階から地上2階まで行かなければなりません。直通のエスカレーターもエレベーターもありません」と話しています。

裁判の結果は?

9月15日にあった東京地裁での判決で桃崎剛裁判長は「経営判断の範囲内で、著しく不合理とは言えない」として請求を棄却しました。乗客は自由に経路を選べるほか、両社も一定の運賃調整をしていると指摘しました。

5 国土交通大臣は、第三項の旅客運賃等又は前項の旅客の料金が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該鉄道運送事業者に対し、期限を定めてその旅客運賃等又は旅客の料金を変更すべきことを命ずることができる。

一 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき。

二 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき。

鉄道営業法第十六条(旅客の運賃及び料金)

今回、国も相手取り提訴をしているのは、鉄道事業法で国の改善命令の対象となる「不当な差別的取り扱い」を主張していたからなのですが、裁判では、それにも当たらず、違法性はないとしました。

まとめ

判決を受け、ネット上では原告らの主張は無理があるという声が多く上がりました。また、原告らは、過去にJR線経由の乗車券で、メトロ北千住駅から西日暮里駅間を強引に利用したことがあります。その際、JR東日本の当時の社長に対して「亀有駅と金町駅の利用者だけ不当な扱いを受けなければいけない納得のいく理由を書面で回答をすれば運賃差額を支払う」旨を内容証明郵便で通知をしています。法外で強引な手法もあるようです。

しかし、ほとんどの利用者が、この運賃の違いに気づかないのではないでしょうか。直通運転やIC乗車券が普及するにつれ、運賃表を見る人も減ってきているので、今回の裁判では運賃の違いについて再認識することができました。

https://www.railmaps.jp/tokyo/

今回の問題は、北千住駅から西日暮里駅で東京メトロを使うと、運賃が打ち切りになるのが問題なのではなく、北千住駅が西日暮里駅に比べて乗り換えが不便という主張があることではないでしょうか。また、快速線と各駅停車が分けられたというのも、他の路線でも発生したことで別問題です。

もし仮に、当時営団が建設した各駅停車向けの綾瀬駅から北千住駅を通過する場合に、メトロ線扱いになるのだとしたら問題かもしれませんが、そういうわけではありません。北千住駅から西日暮里駅は元々メトロの路線として建設されました。

ただ、前述のとおり、北千住駅で乗り換えるか西日暮里駅で乗り換えるかで運賃が異なることがあまり周知されていないのは、今後の課題かもしれませんね。

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船橋 成田
船橋 成田
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