今回は栃木県の宇都宮市から芳賀町を結ぶ「宇都宮LRT(路面電車)」について分かっていることの詳細全てまとめてみました。
路線図・鉄道車両・車両基地・ルートなどの詳細について解説しています。また、建設途中の様子も掲載しています。
宇都宮ライトレール・ライトライン(宇都宮LRT)とは
そもそも宇都宮LRT「ライトレール」「ライトライン」とは何でしょうか?
宇都宮LRT(ライトライン)は宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地までの14.6kmの路線となっています。また全線が複線です。そのうち自動車と一緒に走る「併用区間」は約9.4km、LRTのみの区間である「専用区間」は5.1kmと路線の3分の2は「併用区間」で占められています。
事業方式は整備(下)宇都宮市と芳賀町が行い、営業(上)は宇都宮ライトレール株式会社となっており、「公設型上下分離方式」が採用されています。宇都宮ライトレール株式会社は宇都宮市と芳賀町に対して、施設・車両などの費用を支払い、施設・車両の貸付を受ける形となっています。
事業費は約684億円となっています。
宇都宮LRTライトラインの開業はいつ?
当初の開業予定2022年春となっていましたが、新型コロナウイルスの影響や建設用地の買収が遅れていたため、開業時期が2023年春開業予定に延期されています。
「ライトライン」とは?路線愛称の由来は?
そもそも宇都宮LRTの愛称になぜ「ライトライン」と名前が付いたのでしょうか?路線名称の由来は宇都宮市が雷の多い都「雷都(らいと)」からこの愛称が付けられたということです。
また、車体にも内外装に雷の稲妻をイメージした黄色を取り入れたデザインとなっています。
宇都宮LRTの停留所・駅名について
全部で宇都宮LRTに設けられる停留所・駅名は全部で19駅あります。また、停留所の中でも「トランジットセンター」と呼ばれる鉄道とバスの乗り換え施設が設置されている駅があります。
停留所・駅名については次の通りです。()内は当初計画されていた仮称駅名
・宇都宮駅東口(JR宇都宮駅東口)・・・1面2線のホームが予定されています。
・東宿郷(宿郷町)・・・千鳥配置式の2面2線ホームが設置
・駅東公園前(東宿郷)・・・千鳥配置式の2面2線ホームが設置
・峰(今泉町)・・・2面2線ホーム
・陽東3丁目(陽東)・・・2面2線ホーム
・宇都宮大学陽東キャンパス(ベルモール前)・・・2面2線ホーム、トランジットセンター
・平石(平出町)・・・車両基地が隣接。2面4線で緩急接続(快速列車と普通列車の乗り換え)が可能な駅、トランジットセンター
・平石中央小学校前(下平出)・・・2面2線ホーム
・飛山城跡(下竹下)・・・2面2線ホーム
・清陵高校前(作新学院北)・・・2面2線ホーム
・清原地区市民センター前(清原管理センター前)・・・2面2線ホーム、トランジットセンター
・グリーンスタジアム前(清原工業団地北)・・・2面4線 緩急接続駅快速列車と普通列車が接続する駅となっています。
・ゆいの杜西(テクノポリス西)
・ゆいの杜中央(テクノポリス中央)
・ゆいの杜東(テクノポリス東)
・芳賀台(芳賀台)
・芳賀町工業団地管理センター前(管理センター前)・・・トランジットセンターあり
・かしの森公園前(かしの森公園)
・芳賀・高根沢工業団地(本田技研正門前)
「ライトライン」で使用される車両について 実は福井にも同じ車両
今回の宇都宮LRTで使用される鉄道車両はHU300形という車両が使用されます。第1編成が2021年5月27日に車両基地へ搬入されました。これは福井鉄道で使用している「F1000形フクラム」同じ3両固定編成で、設計最高速度は70km/hとなっています。
ただ、いくつか福井鉄道F1000形と異なる点もあります。
電圧については国内初の直流750Vが使用されており、電気的な損失が少ないことや設備の経済性を考慮して導入されたということです。
また、乗車定員は福井鉄道では座席53人定員155人が乗車可能となっていますが、今回のHU300形の乗車定員は座席50席定員160人に改良されており、日本国内の路面電車の低床車としては最多となっています。ただ、座席幅の縮小などはなく、JR東日本の座席幅に準じて450mm確保されている形です。
また、その他車いすスペースが1編成に2カ所設置、ベビーカーや大型荷物持ち込みに対応するためフリースペースが設けられています。また、宇都宮市が「自転車の街」として市街地で国際大会を行った実績があり、これに関連してと思われますが、フリースペースを活用して自転車の持ち込みをすることが検討されているということです。
ドアは先頭車に3カ所・中間車は2カ所設置されています。
車両寸法は車両長が29.520m、車両幅は2650mmとなっており、これも日本最大の車両幅になっています。また、車両の高さは3.625mとなっています
また、このHU300形の形式の由来は3両連結しているのでHU300形と名前が付いたそうですね。
JR線乗り入れや日本屈指の急こう配対応がされている車両性能
今回導入されるHU300形には他の車両にはない珍しい点がいくつかあります。それは車両の高さと車両性能にあります。これは将来のことを考えてこの性能が採用されていますが、どうして車両性能を高くしなければならなかったのでしょうか?
まず、軌間と車両の高さが将来の計画を表しています。軌間は1067mmが採用されており、これはJR線などで採用されている線路幅と同じです。将来的に既存の鉄道への乗り入れをすることが計画されており、線路の幅だけ見ればJR宇都宮線や東武宇都宮線へ乗り入れすることも可能です。また、車両の高さについてJR宇都宮駅西口への乗り入れを考慮して福井鉄道の同形式の車両と比較して若干高さが低くなっているのが特徴です。
また、JR宇都宮駅西口への乗り入れに際して、走行性能にも特徴があります。なんと最大急こう配67‰にも対応できるということです。この勾配はかつて存在したJR信越本線の横川~軽井沢間の最大勾配とほぼ同じで、これはJR宇都宮駅東口~西口までの間にJR線を跨ぐ必要があり、その際の最大勾配が67‰を想定しているということになります。「交通の難所」が新しく誕生するに伴い、碓氷峠のけん引機EF63と同じ電磁吸着ブレーキが装備していると。宇都宮LRTの公式が発表しています。これには鉄道ファンからは「碓氷峠を超えるとかバケモノ」という声も出ています。
他の路面電車と同じに見えるかもしれないですが、将来への計画のために色々計画されているというのが面白いところです。
宇都宮LRTの車両基地はどこ?
宇都宮LRTの車両基地はどこにあるのでしょうか?
宇都宮LRTの車両基地は1カ所設けられており、場所は栃木県宇都宮市下平出町です。
少し分かりづらいですが、開業後は平石駅が最寄駅となる予定で、開業後であれば徒歩5分~10分程度となりますが、開業前に行くには少し難易度が高そうです。車で行けるのであればそちらの方が便利ですね。
新四号バイパスからすぐで道路から車両基地を見ることが出来ます。
宇都宮駅から車の場合は約9分、路線バスを利用して徒歩で向かうルートで約30分かかります。
列車の運行計画とダイヤ・時刻表予測
宇都宮LRTの今分かっている運行計画はどうなっているのでしょうか?
今回開業する宇都宮LRTは普通列車の他、快速列車が設定されています。所要時間は普通列車で44分、快速列車で37分~38分となっていて、普通列車と比較して11分所要時間が短くなっています。また、最高時速は40km/hとなっていますが将来的には車両の設計最高時速70km/hまで引き上げられるのではないかといわれています。。運転間隔はピーク時に6分間隔(毎時10本)、オフピーク時には10分間隔(毎時6本)の運転となっています。
運賃・料金は初乗り150円~400円で距離に対して運賃が設定されます。
現時点で発表されている運賃の目安は次の通りです。
・宇都宮大学陽東キャンパスまで150円
・グリーンスタジアム前まで300円
・芳賀・高根沢工業団地まで400円
運賃の支払い方法は交通系ICカードが主体となっており、乗りで乗車時にICカードをタッチして、降車時には運転席横の前よりのドアから降りる方式になるのか、利用客が運賃を必ず支払うことを前提に全扉を開ける「信用乗車方式」が採用されるのかどうかも注目されます。また、運転方式も車掌さんが乗務しないワンマン運転となります)
宇都宮LRTの快速列車はどうなる?停車駅は?
宇都宮LRTでは快速運転が行われますが、停車駅などはどうなるのでしょうか?
過去に検討された事例と編集部で予測してみた停車駅・快速ダイヤについて紹介します。
過去に宇都宮市が検討していた4駅停車の快速列車
過去に宇都宮市議会に提出された快速列車停車駅についての検討案が出されたことがあります。
その検討案によると途中の停車駅はJR宇都宮駅東口・宇都宮大学陽東キャンパス前・清陵高校前・グリーンスタジアム前・芳賀台・芳賀・高根沢工業団地に停車するパターンです。
この時に検討されていた停車駅で運転された場合は37分となっていて、現在発表されている快速列車の所要時間と一致します。
また、自動車と一緒に走行しない専用軌道区間を70km/hで走行した場合には約32分で走破するという試算が出ていました。
ただし、この時点では追い越し設備などについては考慮されていないため、これと同じ停車駅になるかは微妙なところです。
そこで、2021年現在の駅状況を踏まえて停車駅を予測してみました。
編集部が予測する宇都宮LRT快速列車のダイヤ・停車駅
まず、快速停車駅を予測するにあたり、重要なのは快速列車が接続する駅についてです。
先ほど、駅名の紹介の中で「緩急接続」ができる駅について記載しましたが、これらの駅は快速列車を停車させることを想定していると考えられます。
確かに待避駅とすることも可能ではありますが、宇都宮LRTと他の公共交通機関との連絡を考えるとトランジットセンターの役割を果たす駅には停車すると思われます。
トランジットセンターの役割を持つ駅は宇都宮駅東口・宇都宮大学陽東キャンパス・平石・芳賀町工業団地管理センター前となっています。
そうすると途中の停車駅は宇都宮東口・宇都宮大学陽東キャンパス・平石・芳賀町工業団地管理センター前・芳賀・高根沢工業団地となります。
この停車駅であれば、先ほどの検討案と同じく途中4駅停車となります。違いは平石に停車し、清陵高校前は通過となる点のみです。
この案が有力ではないかと予測しています。朝の通勤通学のラッシュ時にも快速列車を運転し、途中の平石などで普通列車に乗り換え、快速列車を設定することで遠距離と近距離利用の乗客を分ける「遠近分離」ができるのも、この快速停車駅の特徴でしょう。
今後の発表時にどの停車駅になるのか注目していきたいですね。
始発・終電はどうなる?ダイヤ時刻表を予測
運転時間帯は始発が6時台、終電は23時台を想定しているようです。
車両基地は平石駅にあるため、平石駅を始発・終点となる列車など、起点として系統が分離される可能性もあります。
ただし、宇都宮駅の東京方面の始発時間は4時37分発となっており、残念ながらその時間には間に合いません。あくまで予想となりますが、始発電車が6時台ということであれば、車両基地の車庫がある平石始発宇都宮駅東口行きの列車が設定される可能性があります。宇都宮駅の始発時間には対応すると公式発表がされていますが、始発列車がどこから出るのかは開業時に注目しておきたい点です。
終電についてはどうなるでしょうか?
23時台が終電となっていますが、車両基地があるのは途中の平石駅のみとなっています。運転系統としては芳賀・高根沢工業団地行きと途中の平石行きが設定され、芳賀・高根沢工業団地方面の終電が若干早くなるダイヤが組まれるかもしれません。
逆に最終列車が終点まで行くパターンも考えられますが、車両基地まで反対方向の列車を走らせなければいけなくなります。終点から折り返して車両基地に帰る間は夜1時過ぎになってしまうことも考えられ、最終列車は車両基地のある平石駅までにすることが妥当ではないでしょうか?
理由としては宇都宮駅から終点の芳賀町工業団地駅まで普通列車だと44分かかり、宇都宮駅までの最終の新幹線の時刻が23時38分となっており、乗り換え時間を考えると23時50分発くらいになる可能性があります。
そこから44分かかりますので、終点に到着するのが、0時35分前後となることが予想されます。
芳賀・高根沢工業団地までは終電を早めるダイヤが採用された場合には普通列車で約44分かかることを考えると最終列車の芳賀・高根沢工業団地行きは23時頃に発車するダイヤが設定されるのではないかと思われます。これは22時43分着の普通列車と22時52分の新幹線が到着する時間帯で、東北新幹線を利用した場合にも、在来線を利用した場合にも終電を設定するのであればこの時間帯が適切ではないでしょうか?
今まで関東バスだとベルモール前まで最終バスが21時05分で終了していましたが、終電が約2時間延長の23時台となるので、東京や大阪までの滞在時間が大幅に拡大されることになります。これは旅行などに行った際に威力を発揮しそうです。
まとめ
ここまでの宇都宮LRTについての内容を改めてまとめると、
・宇都宮LRTライトラインの開業は2023年春
・宇都宮LRTの車両はHU300形
・駅名は既に決定済み、全体的に長めの駅名が特徴
・快速運転も実施される予定、停車駅については未発表
・始発と終電は東北新幹線の宇都宮発車時刻に合わせるダイヤへ