東京都内を走っている路面電車は何?ーこう聞かれたら思い浮かぶのは荒川線ですよね。今現在も、東京に残る路面電車は都電荒川線ただ一つだけです。実は明治〜昭和時代にかけては東京を縦横無尽に路面電車が走っていました。では、一体なぜ廃止されてしまったのでしょうか?
 今回はそのことについて、歴史をふり返りながら解説していきます。

東京の路面電車の歴史

まず始めに都電の歴史から見ていこうと思います。起源は1882年(明治15年) 6月に新橋~日本橋間に開通した鉄道馬車(東京馬車鉄道会社)です。この名称から分かるように、最初は馬車鉄道でした。その後1903年(明治36年)に新橋〜品川八ツ山間に路面電車を開通させます。その時に社名を「東京電車鉄道会社」へと改めました。
 1903〜1904年にかけては数寄屋橋〜神田橋間に「東京市街鉄道会社」が路面電車を開通させました。また、皇居の周りを走る「東京電気鉄道会社」の外濠線の御茶ノ水〜土橋間が開通しました。この頃になると路面電車の需要が高まっていました。しかし日露戦争後に経営不振に陥り、3社は統合され民間鉄道会社「東京鉄道」が誕生しました。1911年には東京市(現在の東京都)が買収、社名を「東京市電気局」へ変更しました。1943年に東京都制が施行され東京市から東京都へと変更されました。このことを受けて、ついに「都電」が誕生することになりました。

東京の路面電車の最盛期と廃止

まだ東京市電の頃の1919年には既に営業キロが138km、10系統にまで拡大していました。絶好調に成長している最中、関東大震災によって大きな被害を受けたのです。被害内容は車両の大量損失、車庫の消失、線路・架線の大損害などでした。しかし、都電は華麗なる復旧を成し遂げたのです。
 都電はその後も路線を拡充していきました。途中、第二次世界大戦で再び損害を被りましたがそれをも乗りこえ、1943〜62年ごろにかけての最盛期には営業キロ213km、40系統もの大勢力となり、一日の利用者が174万人にまで達しました。路面電車が東京の交通インフラを支えた時代でした。
 やがて時は流れ、日本は高度経済成長期へと突入していきました。この頃になるとモータリゼーションが進み、街中には自動車が増えていきました。あちらこちらで渋滞が慢性的に発生し、路面電車は次第にダイヤ通りの定時運行ができなくなっていきました。また1963年の営団地下鉄丸ノ内線開業により都電杉並線(新宿〜荻窪)が廃止されました。1966年には都営地下鉄三田線の開通により、巣鴨車庫〜志村橋間の41系統が廃止されました。その後も都電の利用者たちは別の交通手段へと流れていき、東京市電気局の経営状況は徐々に悪化してしまいました。
 そして1972年11月、ついにその日が訪れてしまいました。そう、その日というのは。。。
三ノ輪橋〜赤羽間の27系統と荒川電車前〜早稲田間の32系統の2路線のみを残し、それ以外の路線は全て廃止されたのです。最盛期には40系統以上、営業キロ213kmを誇った大鉄道網の終焉でした。自動車が普及していない頃には人々の移動の足として欠かせない存在でしたが、徐々に邪魔者扱いされていったのです。そして残された27系統と32系統を統合してできたのが今の荒川線の姿になっています。

東京の路面電車「荒川線」のこれから

 冒頭でも書いたように、東京に現在も残る路面電車は荒川線だけです。三ノ輪橋〜早稲田までの全長約12kmを結ぶ短い路線です。2017年には新たに「東京さくらトラム」という愛称が設定されました。荒川線が廃線を免れた理由は何か?ーそこには大きく2つの理由があります。1つ目は路線の大部分が「専用軌道」を走行していたからです。通常の路面電車は自動車と並走しますが専用軌道の場合は車道と完全に区切られています。そのため道路の渋滞を引き起こさず、また巻き込まれないのです。2つ目の理由は線路に並行して走れる道路がなかったからだと言われています。バスで代替運行しようとすると遠回りしなければならず、鉄道に比べて時間がかかってしまいます。それに加えて、沿線の住民から路線存続を望む声が多かったことも廃線を免れた理由となったようです。

まとめ

明治時代に馬車鉄道から始まった東京の路面電車は人々の足として重宝されていました。しかし時代の流れには抗えず運行会社は瀕死の状態も経験してきました。度重なる困難を乗り越え、最後まで残った荒川線は東京都民、日本国民に愛される存在となりました。
 2023年8月26日に宇都宮にLRTが開業しました。LRTは次世代型路面電車とも呼ばれ、新しく開業するのは実に75年ぶりとのことです。今後も路面電車の有効性の見直しが続いていくものと思われます。
 そんな路面電車の大先輩である荒川線はこれから何年、何十年先までも力強く走り続けてくれることでしょう。

5 1 投票
Article Rating
申し込む
注目する
guest
0 Comments
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事