鉄道車両は新造されてから20年から40年程度使用されると、金属で作られた車体や機器などの各種部品が老朽化したりすることからいつかは廃車にされてしまいます。
これは鉄道車両が機械であるために、各種機器の老朽化による動作不良が事故を招く可能性があることも否定できないことから起こり得るものであります。
新造されてから廃車までの年数は、一部の新幹線や都電6000形、209系の一部の車両のように減価償却期間である13年程度で廃車されてしまうものもあれば、東武8000系の一部車両やJR西日本の113系や115系の一部車両、南海6000系など、40年を超えて50年近くにも及んで使用されているケースも存在しています。
また特急車両など高速走行を繰り返す車両は老朽化の進行が速く、一般の通勤車両よりもはるかに速く廃車されるケースも存在し、特に新幹線が13年前後で廃車されるケースが多いのは、このことが原因であるというのが強いと思われます。
新造から廃車までの年数は会社の経営状況・経営方針にも影響されているのも事実で会社によって、特急車両は新造しても通勤車は古い会社というのも存在します。
過去から現在に至るまで、多くの鉄道車両が老朽化が起因となって廃車されているケースが多いのですが、
今回は老朽化の要因で新型車両での置き換えが決まっており、消滅の近い関東の車両を5つピックアップしたので、簡単に紹介してみようと思う。
【引退する前に撮っておきたい車両その1】東急8500系
東急では、1969年から当時建設していた現在の田園都市線渋谷駅~二子玉川駅間にあたる、新玉川線向け車両として、地下線火災対策基準を満たした8000系を東横線に順次導入し、当初はこれを新玉川線の車両に使う予定でした。
しかしその後、渋谷駅から都心方面に直通運転を行う予定の営団地下鉄半蔵門線への乗り入れにあたって、東急・営団で乗入の協議が行われ、乗入の協議の結果、路線識別用の赤帯の貼付、機器取り扱いの変更、電動車比率の向上による先頭車の電動車化などのマイナーチェンジを図った車両を導入することになり、8000系にマイナーチェンジを行った車両として、田園都市線・新玉川線・半蔵門線向けとして、1975年から8000系6次車以降として導入された車両が8500系です。
4両編成から5両編成、6両編成、8両編成、10両編成へと順次車両数は増やされていき、最終的に10両編成38本と5両編成4本が製造されていて、運用範囲は田園都市線や新玉川線、半蔵門線だけでなく東横線や大井町線などでも運用されていたこともあり、また一時期は中間車に8000系を組み込んでいた時期もあったが、最終的には田園都市線系統に集結され、8500系だけで編成を組成するようになった。
その後田園都市線で運用され続けていると、半蔵門線と東武伊勢崎線が直通運転を開始し、東急、営団地下鉄、東武の3社相互直通運転を開始することになり、2003年の半蔵門線水天宮前駅~押上駅間延伸に際して、東武線とも相互直通運転が開始されました。
この東武線直通に際しては、当初8500系全車に東武線用保安装置の追設をすることで賄う予定でしたが、東武線内の保安装置が東急や営団で使っていたものと全く異なる仕様のものであったため、改修工事費用が掛かる事から、8500系の初期編成は東武線に乗り入れないこととして対処されました。
その結果、東武線直通対応の新型車両5000系が2002年から投入され、5000系の投入に代替される形で8500系は順次廃車されることになり、最初の投入では最初に作られた2編成と、5両編成を2編成連結した編成が置き換えられました。
5両編成を2編成連結した2編成は大井町線予備車を兼ねていたのですが、分割されて5両編成4編成となって大井町線専属となり、8614Fまでの編成とVVVFインバータ制御装置を搭載した8642Fを除いた編成に東武線直通対応の改修を行い、相互直通運転開始に備えました。
8500系の「サークルK」が誕生した理由とは?本来はもっと早くに廃車になっていたが先延ばしに
その後、5000系6ドア車導入による車両不足を補うため、2004年度には8613Fと8614Fも東武線直通対応とされ、また改修対象から外され東武線直通非対応となった編成は、識別のため非常扉に丸囲みの「K」のシールが貼付され、鉄道ファンなどから「サークルK」と通称されることになりました。
5000系の導入によって初期編成を中心に廃車が進められましたが、リーマンショックや東急が大株主だったJALの破綻などによってそれは予定通り進まず、サークルK編成も8606Fと8642Fが長年残っている形となっていて、5000系列の導入は中断され当面260両が残っていた形となっていました。
東急8500系は2020系で置き換え・廃車か?
しかし2017年より新型車両2020系が順次導入されていて、これで8500系や2000系、東横線からのちに転入してきた8590系を置き換えていて、2020年に8606Fが廃車されたのをもって、サークルK編成に関しては全て廃車となり、残っている車両もそう遠くないうちに全車が廃車となることではないでしょうか?
【引退する前に撮っておきたい車両その2】相鉄新7000系
1960年代、相鉄では6000系のアルミ試作車両としてモハ6021が製造され、鋼製の同型と比べて大幅な軽量化に成功しました。
さらに1970年代初頭、2000系や5000系といった車両を、アルミ製車体に乗せ換えることで、性能を落とすことなく車体の大型化に成功しました。
これらの成功から、当時の標準車両であった新6000系の設計を基に、軽量性に優れるアルミ製車体を有する新形式として製造されたのが7000系です。
その中でも、1986年~1989年に製造された車両は前面スタイルが大幅に変更されたため、在来の7000系に対する視覚的な区別から新7000系と呼ばれています。
新7000系と7000系の違い 利点と欠点とは?
新7000系は全車両が日立製作所で製造され、合計60両が投入されました。
初期の2編成の機器面は在来の7000系と大差はなかったが、1988年以降に導入された編成では機器面でも大幅な刷新が行われ、GTO素子によるVVVFインバータ制御など最新機軸が多く導入され、導入された多くの新機軸は、後に8000系や9000系にも採用されました。
1988年度以降に導入された50番台に区分される新7000系は、VVVFインバータ制御の採用と合わせて新設計された大出力モーターの採用と歯車比の見直しにより、電動車の数を減らすことに成功しました。
しかし降雨や降雪といった悪条件時の粘着力が十分とはいえず、更に軽量車体であるがゆえ、滑走が発生しやすくなるという問題点も発生しました。
またブレーキ方式は、いわゆる日立式電磁直通ブレーキと呼ばれる、電磁直通弁式電磁直通ブレーキとしては、
初の回生ブレーキ付とされたが、作用機構が複雑であったためか、この新7000系50番台だけの採用に留まっています。
そんな新7000系ですが、相鉄のとある社運をかけた「プロジェクト」によってそろそろ全廃されそうです。
相鉄都心乗り入れで新7000系はどう変わる?9000系・8000系も置き換え対象
そのプロジェクトこそ、「相鉄都心乗り入れプロジェクト」である。
今回は詳しい説明を省きますが、大まかに1992年より前に登場した車両については全車両12000系や20000系によって置き換えることになっています。
そのため現在置き換え対象となっているのが8000系のうち8706×10までの編成と、9000系9701×10、そして新7000系のすべての編成となっています。
既に新7000系抵抗制御車と7755×10が廃車され、8000系でも廃車が出ている今、現在残っている10両3編成いる新7000系の動向については予断を許さない状況となっていて、2020年度に相鉄では既存車置き換え目的で20000系を10両4編成導入する予定です。
もしかすると、2020年度内に新7000系は廃形式となってしまうかもしれませんね。
【引退する前に撮っておきたい車両その3】209系2000-2100-2200、1000、3100番台
国鉄から大量に引き継いだ老朽化が進んだ103系の置き換え、および一部は輸送力増強用などとして、1993年4月より革新的な新しいコンセプトのもと、京浜東北線・根岸線などに本格投入された車両が209系です。
209系は国鉄時代に開発・導入された在来技術に基づく鉄道車両のシステムを一から見直し、製造・整備の方法を全面的に改めた新しい設計思想が採用されています。
この209系は「価格半分・重量半分・寿命半分」を開発目標に掲げ、JR東日本で209系以降の車両を「新系列車両」として区分している。
そんな209系は現在、0番台及び3000番台は営業用車としては全廃、500番台が京葉線、武蔵野線、1000番台が中央線快速電車、2000番台及び2100番台が総武本線などの千葉地区、2200番台がジョイフルトレイン『BOSO BICYCLE BASE』、3100番台・3500番台が八高線・川越線で運用されています。
209系のコンセプトは他の形式にも影響 今後の動向は?
209系を起源とする「新系列電車」の一群は、JR東日本における電車設計の標準となっただけでなく、
車両製造から廃車に至るライフサイクル自体の再検討など、単なる新技術導入に留まらない新たなコンセプトを具現化しながら大量生産・継続運用されており、他のJR各社や私鉄など、日本の主要な鉄道事業者の車両開発にも大きな影響を与えました。
しかしながら当初の開発目標に「寿命半分」というワードがあり、現在運行している車両もかなりガタが来てしまっているためか、209系を発展させたE231系やE233系が導入されたため数を減らしていき、3100番台についてはE231系や209系3500番台にて置き換えが進められました。
現在はワンマン化などの要因からか予備車両として残存していますが、これもそう遠くないうちに廃車となるであろうと思われます。
中央線快速電車の1000番台に関しても、中央線快速電車へグリーン車導入に関する工事のための予備車であるため、一連の工事が終了すると廃車になると思われ、2000番台及び2100番台は房総地域のワンマン運転の開始に伴い一部区間を新型ワンマン対応車両であるE131系を導入して置き換え、比較的千葉に近く、長編成での運転が多い線区では、京浜東北線への新型車両投入に伴う捻出されたE233系での置き換えなど、先行きはあまり長いものとは言えません。
3100番台、1000番台、2000番台、2100番台、2200番台がなくなると、209系からストレート車体のものが消滅する格好となります。これも早めに撮影していた方がいいでしょう。
【引退する前に撮っておきたい車両その4】E217系
横須賀線や総武快速線などで運用されていた113系の置き換えを目的として、1994年に量産先行車である基本編成11両編成・付属編成4両編成各2本が誕生しました。
翌1995年からは量産型の落成が始まり、1999年までにかけて量産先行車を含めて基本編成51本、付属編成46本計745両が製造された車両がE217系です。
このE217系は、国鉄及びJRの近郊形車両で初めての4扉構造を採用したことが特徴的です。
それまでの近郊形車両は国鉄時代から3扉車が導入されており、4扉近郊形車両は国鉄時代に導入が検討されたが実現には至っていませんでした。
車内の座席配置については混雑緩和を最優先とし、通勤形タイプとなるロングシート構造を基本としながらも、
編成中の一部車両には遠距離旅客や観光客へ配慮したクロスシートを設けたセミクロスシート構造としていて、
基本編成のみ2階建て構造のグリーン車を組み込んでいます。
E217系のグリーン車インドネシア譲渡はどうなる?今後の動向は?
このE217系ですが、 JR東日本が「新系列車両」として開発した先ほど紹介した通勤形車両209系を近郊形車両へと改良・発展させたものです。
そのため、209系の設計の特徴である「寿命半分・価格半分・重量半分」を継承していて、2007年から2013年にかけて電子部品の更新などが実施されてはいるが、20年以上酷使されてきてガタが来ていることから、2020年の秋ごろより新型車両として、山手線にも導入されているJR東日本の新型形式であるE235系を導入し置き換えていくこととなりました。
横須賀線・総武快速線系統向けE235系の現車は既に落成していて、試運転が進められています。今後はE235系の営業運転開始と前後してE217系の廃車が進められていくものと思われます。
廃車になったE217系に関してはインドネシアへ譲渡されるという話もあるようですが、実際のところは解体となるか譲渡となるかは分からないというのが実際のところかと思います。
【引退する前に撮っておきたい車両その5】特急踊り子185系
1970年代の東海道線では、153系が普通列車や急行列車「伊豆」に運用されていましたが、1980年の時点で東海道線に運用されていた153系の大部分が、製造後20年程を経過しようとしており、伊東線や伊豆急行線などといった海沿いの路線を走行することもあって、塩害などによる経年劣化が深刻な状況でした。
そのため、この153系を置き換えるために、新型車両が設計・製造されることになりましたが、営業サイドからこの急行「伊豆」を特急に格上げすることが要求されたため、この新型車両製造に際しては特急運用を念頭に置いた車両とすることになりました。
185系は普通列車・特急列車 両用がコンセプト
一方、車両の総製造数を抑える目的から、この新型車両は従来の153系と同様普通列車にも使われることになったため、153系の後継車両は前代未聞の国鉄では初めての試みとなる「特急用と通勤用で両用可能」な新型車両として製造されました。それが185系です。
また、急行伊豆と特急あまぎを統合して生まれた特急踊り子だけでなく、高崎線系統などの特急列車や、大宮までしか開通していなかった頃の東北・上越新幹線の乗客の都心への輸送としての目的でも製造されていて、10両編成、7両編成、5両編成の3パターンの編成構成のバリエーションがあり、5両編成から15両編成まで、多種多様な編成が組まれていました。
途中普通車座席の転換クロスシートから回転式リクライニングシートへの取換などのリニューアル工事を経て、30年以上使われ続け、高崎線の特急あかぎなどからは撤退してしまったが、2020年になった現在でも特急「踊り子」や湘南ライナーなど多種多様の運用に使われていています。
しかし、老朽化が進んできていることから、常磐線からやってきた651系や、中央線や房総半島からやってきたE257系に置き換えられつつあり、2014年から編成単位で廃車が進められていて、E257系が全数投入完了する頃には完全に185系は引退となるのではないかと思われます。
引退する前に撮っておきたい車両 まとめ
いかがでしたでしょうか?
最近では東海道新幹線で新型車両N700Sが導入されたことによって、N700系初期車の廃車が始まっており、
比較的最近の車両であると思うのに廃車が始まっていることについては、驚きを隠せない人も多いのではないかと思いますが、N700系も今年で営業運転開始で13年、新幹線の廃車基準の一つである減価償却期間13年をまもなく迎えそうな頃であるため、致し方ないことだと思います。
今回取り上げた車両以外にも、もうすぐ引退となってしまいそうな形式は関東圏でも他に複数あると思いますので、それらの車両があれば是非ともコメント欄にて教えていただければと思っています。
今回はこつあず鉄道チャンネルさんの動画を記事化しました。動画はこちらからご覧ください。
8500系、今のところ8606F先頭車除く全車が解体されていますが、今後残っている編成に地方譲渡が出てほしいところです。比較的経年の浅い8635、36Fと、加えてドアチャイム・LED案内表示器・放送付きの8634、37Fあたりで動きが出るかもしれないですね。
e217系の譲渡は車体の状態的に難しい面はあるでしょう・・・