ドアの上などにある液晶ディスプレイ「トレインチャンネル」はどのようにして完成したのか?

今や山手線の車内で天気予報・運行情報を確認することは、電車に設置されている「液晶ディスプレイ」で確認することが当たり前となっています。

しかし当時はまだ当たり前ではなく、その基盤はインターネットを駆使して2000年代に作られました。

上記の画像は「トレインチャンネルではなく、あくまで駅の情報ディスプレイに表示するため」のネットワークですが、構想自体は「トレインチャンネル」にもつながるものがあります。

日本テレコムという会社は聞きなれない人もいるかと思いますが、現在ソフトバンク吸収した会社になります。

JRのロゴに「灰色」が実は存在した?日本テレコムが光ケーブルを持っていた理由

しかし、ソフトバンクに吸収される前の設立の経緯としては、日本テレコム(初代)→鉄道通信株式会社(JR通信)→日本テレコム(2代目)という流れだったため、JRと関連の深い通信会社であったことは分かります。

なぜ鉄道会社が通信会社に選ばれたかというと「電線を引く場所を持っているので通信に適している」という判断のもと設立されたのではないかと言われています。同じ理由で日本高速通信(高速道路を所有)という会社も存在しました。

また、現在存在しているJR各社のロゴには色が付けられていますが、色なしのロゴがJR通信には使われていました。(ソフトバンクが商標登録を持っていたが、現在は失効)

話は戻しますが、そういった理由で「山手線光ケーブル網」を持っていたのではないかと推測されます。

【デジタルサイネージの前身?】駅で行われたデジタル広告の実証実験

山手線の車体広告が好評で成功を収める中で、2002年から山手線の「東京」「渋谷」「新宿」の各駅で実証実験が行われました。

ただし、この時の名称はデジタルサイネージではなく、当時の表記には「駅デジタルポスター」と書いてあることから、あくまでそれまで紙媒体だったポスターをデジタル広告に転換できないかという試みから行われたものであると推測されます。

しかしながら上記画像のような駅の広告ディスプレイは、現在JR東日本のみならずJR各社・私鉄各社・その他商業施設などでも使われていることから「デジタルサイネージの前身」ともいえるかもしれません。

当時の「駅デジタルポスター」のコンセプト
  1. 日本テレコムの中央配信センターから山手線光ケーブル網を利用して、各駅の各端末に情報データを配信し、広告を表示させるための技術的検証を行います。
  2. 朝と夜で表示する広告を変えるなど、時間帯やお客様の流動に合わせた広告をタイムリーに掲出し、広告効果の検証を行います。
  3. 静止画や半動画、動画による広告など、駅の媒体として有効と思われるコンテンツ・表現方法の可能性を検証します。
  4. 広告の他、天気予報や列車運行情報などを混在して流すなど、表示内容をマーケティングすることにより、広告事業としての運営ノウハウの確立を行います。

※当時のJR東日本の情報から引用

特に画像のような新宿駅で実施された「液晶ディスプレイの連続で配置するやり方」は現在のJR品川駅の連絡通路でも同じような光景が見れることから、それにも貢献したのではないかと推測されます。

いずれにしても当時としては「時代の先端を行っていた」というのは、確実に言えることだと思います。

【E231系500番台導入】当時のインターネットの技術を駆使して作られた車両

 

2001年に導入が発表された「E231系500番台」という車両は、2020年現在山手線では運転されておらず、「1世代前の車両」です。

先述の205系電車を置き換え、車内にインターネットの技術を投入して車内を一新する車両を導入されました。

今では「日常的な風景」でしかありませんが、当時としては「かなり画期的」であったことが分かります。

当時の「トレインチャンネル」のコンセプト
  1. ITを活用し、地上から車両へさまざまな情報を送ります。受信した情報をお客様への新しいサービスとして、車内の各ドア上に取付けた2台の液晶ディスプレイでご提供いたします。
  2. ご提供する情報の内容は、向かって左側の画面では、動画広告・文字放送(ニュース・天気予報等)を行い、向かって右側の画面では、次駅・行き先・乗り換え・駅設備案内・ドアが開く方向・輸送障害時の情報などです。輸送障害の情報は、携帯電話で行っているサービスと同様に、リアルタイムでご案内いたします。
  3. 各情報のコンテンツ更新は、人手を介さず無線により書き換えを行います。
  4. 静止画像の文字は高解像度で表示します。

E231系500番台のコンセプト
  1. 従来の山手線車両と比べて車体の幅を広げた車両となり、定員は1編成当たり88名の増となります。
  2. 導入する車両の編成は、現在と同じ11両ですが、スムーズな乗降が可能となる6扉車を現在の10号車の他、7号車にも配置します。
  3. 今回の新型車両導入により、混雑率は約10%程度緩和されます。
  4. 空調をフルオート化し、車両毎に季節や混雑の程度に合わせて、きめ細やかな温度調節を実施します。
  5. バリアフリーに配慮し、車両の床面高さを下げています。これによりホームとドアの段差は現在の205系と比べて30mm少なくなり、車椅子での乗り降りも容易になります。
  6. 車椅子スペースを1号車と11号車に設けます。
  7. 車体の軽量化・電力回生ブレーキによる省エネルギー、リサイクル可能なシートクッションの採用や代替フロンの採用など環境対策に配慮した地球にやさしい車両としています。

※6扉車はホームドア設置に合わせて現在は廃止されています。

当時持っていた技術を実用的なものにし、JR東日本の他の路線でもニュースや運行情報を提供する「トレインチャンネル」を普及させる先駆けにもなりました。

JR東日本での「運行情報」の提供は後にJR西日本などの各社・私鉄各社も追従する形で導入するなど、その影響は鉄道会社全体に大きな影響を与えたといえるのではないでしょうか?

【山手線版テレビカー?】走行中の列車で「史上初の生放送」でプロ野球・ナイター中継を行う試みが行われた

「トレインチャンネル」が導入され山手線でそれが「当たり前」となりつつある中で、E231系500番台が導入されてから2002年から2005年にかけて205系の置き換えが完了したころ、2006年に「山手線版テレビカー」ともいえる史上初の試みが行われました。

「テレビカー」とは大阪市内~京都市内を走る京阪電車にかつて「テレビが設置されていた車両」がありましたが、JR東日本でもそれ似た実証実験がかつて行われました。そちらは本当にテレビが見れたようですが、山手線でも「トレインチャンネル」を使用した実証実験が日本テレビと協力して行われました。

その列車は名付けて「デジタルGトレイン」。「トレインチャンネルを活用して、プロ野球の生中継を山手線で放送する」というものでした。

この頃はテレビ放送が「アナログ放送」からデジタル放送への転換期であり、実験的に導入してみるということだったのかもしれません。

実際に山手線の車内で試合が放送され、2006年4月~5月(合計15 日間)行われたようです。(雨天中止などについては不明)

また、20時54分までの放送としながらも試合が長引いている場合は「21時54分まで延長して生中継」を行うなど、テレビ中継とほぼ変わらない情報が車内で見ることができたのではないかと思われます。

ただし、音声は「トレインチャンネル」同様音声は出力されなかったようです。ホームランとかが出れば車内は湧いたかもしれません。(今やったらTwitterとかで話題になっているかもしれませんね)

残念ながらその後実用化されることはありませんでしたが、試みとしてはかなり面白かったかと思います。

いかがだったでしょうか?今当たり前に「車内のディスプレイで運行情報・ニュースが確認できる」ということは「昔は当たり前ではなかった」ということはご理解いただけたかと思います。

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