JR西日本は2021年10月に実施するダイヤ改正で大幅な減便を実施すると発表しました。本来2022年3月に実施する予定だったということですが、前倒しにする形で実施されます。
JR西日本「(利用は)コロナ前の水準には戻らない」 収入は60%減、利用も75~80%減
列車ダイヤの見直しを検討していることは、これまでも何度かお伝えしてきましたが、本日は来春のダイヤ改正の前倒しで、秋に実施するダイヤ改正の概要をお知らせします。
出典:JR西日本 「2021年 5月社長会見 1.営業・輸送概況 2.ご利用にあわせた列車ダイヤの見直し」より
まず、ご利用の状況と取り組み概要です。
グラフにあります通り、新型コロナの影響により、コロナ前と比較して在来線特急のご利用は約3割、近畿エリアとその他の西日本各エリアは約6~7割と、大きく落ち込んでいます。
この非常に厳しい状況は、今後ワクチン接種の進捗により、回復に向かうことを期待していますが、コロナ前の水準には戻らないと考えています。
一方、主要3駅の時間帯別のご利用では、朝・夕の通勤時間帯も含めた全時間帯で減少していますが、特に昼間と夜間の減少率が大きくなっています。
このような状況のなか、構造改革として、ご利用にあわせた列車ダイヤの見直しを実施します
今回のダイヤ改正の発表で最も衝撃的だった文章は「(利用は)コロナ前の水準には戻らない」ということが明記されていたということです。社会構造が大きく変わる厳しい状況で前例無き減便がされるということになります。
また、今回2021年5月期(5月14日まで)の取り扱い収入・利用状況が発表されました。
全体の収入は2019年10月比39.1%(約60%減)、利用率も在来線では40%となっているものの、北陸新幹線27%、山陽新幹線27%、在来線特急20%となっており、約75~80%減少となっており、厳しい状況となっています。
ダイヤ見直しで約130本減便へ 運行本数と利用実態が大きい線区が対象
今回のダイヤ改正は、京阪神エリアでは「データイムを中心にした一部線区で」行われます。これはデータイムの利用が大きく落ち込んでいるためで、合計で約60本の減便となります。
その他、JR西日本の北陸・南紀・山陰・北近畿・瀬戸内エリアの路線では、朝・夜間などの時間帯見直しを含むということです。
京阪神エリアで減便対象となる線区・区間は?予測される減便の列車は?
- 琵琶湖線(米原~長浜)・・・新快速の始発駅・終着駅を米原に変更?
- JR神戸線(須磨~西明石)・・・普通列車の始発駅を須磨に変更?
- 赤穂線(相生~播州赤穂)・・・新快速播州赤穂行きを姫路行きに変更?
- JR京都線(高槻~京都)・・・京都行きの普通列車を高槻行きに変更?
- 山陽線(姫路~上郡)・・・姫路~相生間の新快速も減便?データイムの相生~上郡の区間列車が廃止か?
- 大和路線(奈良~加茂)・・・大和路快速を加茂行きから奈良行きに変更?
- その他の路線でも実施
減便される線区・区間について記載し、右側には減便が予測される列車についてまとめました。
琵琶湖線の新快速が50%減か 1本/時になる可能性も
まずは琵琶湖線についてですが、長浜始発・終着の新快速電車が減便の対象になると思われます。もし、この減便が実施されればデータイムに運転されている列車が、1時間あたり2本~1本で運転されることになります。
JR神戸線 西明石発着の普通列車が減便の対象か?
JR神戸線では須磨~西明石で減便が実施され、現在西明石行きとして運転されているものを須磨駅で折り返しに変更することで減便されるものと思われます。どの程度減便されるかは分かりませんが、普通列車しか止まらない塩屋駅・朝霧駅以外の駅については快速列車が停車するため、影響は極めて限局的となりそうです。
また、塩屋駅・朝霧駅についても現行ダイヤで毎時4本が確保されているため、毎時3本くらいになる可能性があります。
JR京都線 京都発着の普通列車を高槻行きに変更か?
JR京都線では高槻~京都で減便が実施されます。ただし、現行の平日ダイヤでは影響が少ないものと思われます。
理由としては、平日のデータイムに運転されている京都~高槻の普通列車は米原行き・野洲行きとして運転されており(高槻までは快速列車として運転)、これを減便すると減便の対象区間以外にまで影響が波及するため、減便することはできないからです。また、高槻まで快速として運転される列車についても減便対象ではないことが読み取れます。
平日の11時・12時台については減便の対象列車がありません。(ただし、土休日には京都行きが存在。減便の可能性も)
赤穂線・山陽線の減便は新快速を姫路発着に変更か
データイムの相生~上郡の区間列車が廃止か?
赤穂線と山陽本線については運転系統が重なっている部分が多いため、同じ項で予測をしたいと思います。
まず、赤穂線直通する新快速播州赤穂行きは姫路発着または相生発着に変更される可能性があります。播州赤穂行きを姫路発着にすることで、山陽線の相生~姫路間の減便も可能となります。
次に山陽線についてですが、データイムに運転されている相生発上郡行きの区間列車が一部廃止することで、減便が行われるものと思われます。
これにより山陽線相生~上郡間の普通列車が一部廃止されれば、毎時1本となる時間帯が発生するものと思われます。この列車は上郡駅から先の岡山方面・智頭急行との接続が取られていないため、廃止になると思われます。
ただ、上郡→相生の普通列車が廃止になると相生で新幹線へ乗り換える場合は影響が出そうです。相生まで移動すると相生駅毎時53分発のひかりに乗り換えることが出来ますが、2021年10月のダイヤ改正でこの乗り換えができない可能性があります。
大和路線は大和路快速が減便対象に 行先変更で対応か
今回データイムに運転される加茂~奈良の列車について減便対象となることが発表されていますが、大和路快速の加茂行きを奈良行きに変更して、減便が実施される見込みとなっています。
現行ダイヤではデータイムでは全て大和路快速の列車が加茂まで運転されていますが、減便によって、毎時2本から毎時1本のダイヤになると思われます。
また、奈良駅毎時50分発の大和路快速は加茂から関西本線の列車に連絡しないため、減便となり、毎時16または20分発の大和路快速は関西本線に乗り換えられる列車のため減便にはならないと思われます。
現在影響が特に大きい在来線特急については既に実施されている減便、臨時列車化が行われています。コロナの影響で45%も減便・臨時列車化されていますが、これは維持していくということです。ただし、状況によっては柔軟に対応するということで、更なる減便になる可能性もあります。
京阪神地区以外で減便が実施される線区・区間は?九頭竜湖線(越美北線)は廃止間近か
減便は京阪神地区以外でも実施され、京阪神地区と違い朝の時間帯・夜の時間帯も減便の対象となります・
- 北陸エリア・・・小浜線、越美北線
- 北近畿エリア・・・山陰本線
- 南紀エリア・・・きのくに線、和歌山線
- 山陰エリア・・・山陰線、伯備線、因美線、境線
- 北近畿エリア・・・山陰線
- 瀬戸内エリア・・・瀬戸大橋線
- その他の路線でも実施
京阪神地区以外の減便は主要幹線に加えてローカル線が多く入っていることが分かります。
特に境線・越美北線・因美線・小浜線・伯備線は元々路線本数が少ないにも関わらず、減便対象となっており、毎時1本未満の運転本数になると思われます。特に越美北線については3月のダイヤ改正に引き続きの減便となっており、越前大野~九頭竜湖までは現行ダイヤで1日4本となっており、さらに減便されるとなれば三江線に次ぐ廃止路線となる可能性が現実味を帯びてきた形です。
今後JR九頭竜湖(越美北線)が廃止になる話題が出ないかどうか注目されます。全線廃止とはならなくても越前大野~九頭竜湖までの部分廃止も視野に入ってきた形です。
また、ローカル線の中でも木次線などは減便対象から外れています。
2021年10月のダイヤ改正まとめ
改めて今回発表されたダイヤ改正のまとめです。
- JR西日本は収入・利用率を発表。「コロナ前の水準には戻らない」と厳しいコメント
- 京阪神地区などでは区間列車が主に廃止または行先変更の予測
- ローカル線も減便対象へ
- JR九頭竜湖線(越美北線)も減便対象 越前大野~九頭竜湖までについてはいつ廃止されてもおかしくない状況に
JR西日本ダイヤ改正の今後の予定 来春は全エリアが対象
JR西日本では2021年10月に実施するダイヤ改正のほか、2022年春にJR西日本管内全エリアで減便が実施されることになります。特に赤字経営が続いている木次線・芸備線・姫新線(ローカル区間)についても減便が実施され、路線が廃止にならないか心配するレベルの列車本数となりそうです。
また、利用率のデータを見る限り、山陽新幹線・在来線特急にも減便が実施されることになり影響が出るかもしれません。